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仰臥位および立位での心拍変動解析再現性

こんにちは!こころです。
AIと一緒に、研究や臨床の現場で役立つ心拍変動(HRV)解析の論文をご紹介しています。
心拍変動(HRV)を“研究や臨床で使う”ときに、必ず確認しておきたいのが「再現性(信頼性)」です。
特に、姿勢・体位・心拍数の影響を受けやすいHRV指標では、
「同じ条件で測ったときに、どの程度ブレなく評価できるのか?」
という視点がとても重要になります。
今回紹介する Clinics(2019) の研究は、
仰臥位と立位という、もっとも基本的な“姿勢の違い”がHRVの再現性に与える影響 を詳細に検証したものです。
若年男性を対象に、48〜72時間あけて3回
仰臥位・立位それぞれでHRVを繰り返し測定し、
・時系列指標(SDNN, r-MSSD)
・周波数指標(LF, HF, LFnu, HFnu)
・数学的補正後の指標
など幅広く評価しています。
この研究のポイントは、
姿勢が変わってもHRVはしっかり“再現できる” という安心感と、心拍数を調整すると、その安定性がもう一段レベルアップするという実務に役立つヒントを示しているところにあります。
きりつ名人の測定プロトコル(安静→起立)の妥当性を裏づける「再現性研究」として、研究・臨床のどちらにも応用できる内容ではないでしょうか。

目次

健康成人男性における仰臥位および立位での心拍変動解析再現性に対する心拍数の影響

Title(英語・日本語)

英語題名: Impact of heart rate on reproducibility of heart rate variability analysis in the supine and standing positions in healthy men
日本語題名案: 健康成人男性における仰臥位および立位での心拍変動解析再現性に対する心拍数の影響


Journal Name & Publication Year(雑誌名・発行年)

  • 雑誌名: Clinics

  • 巻・号・ページ: 2019; 74:e806

  • DOI: 10.6061/clinics/2019/e806


First and Last Authors(第一・最終著者)

  • First author(第一著者): Carlos Janssen Gomes da Cruz

  • Last author(最終著者): Guilherme Eckhardt Molina


First Affiliations(第一所属)

  • 第一所属(英語):
    Grupo de Estudos e Pesquisas em Funcao Autonomica Cardiaca (GEFAC), Centro Universitario Euro Americano – UNIEURO, Brasilia, DF, BR.


Abstract(要約)

  • 目的:
    心拍変動(HRV)の再現性(信頼性)は、体位や心拍数(HR)の数学的影響を考慮した場合、十分には理解されていない。本研究の目的は、若年健常男性において、仰臥位および立位でのHRV解析の再現性を、平均R–R間隔(iRRaverage)による数学的補正の有無で比較・評価することである。

  • 方法:
    37名の若年男性(年齢23.1±4歳、BMI 25.1±3 kg/m²)を対象とし、仰臥位および立位で5分間のR–R間隔(iRR)を取得した。測定は48時間間隔で3回実施。時間領域指標(SDNN, r-MSSD)と周波数領域指標(LF, HF, LFn.u, HFn.u)について、

    • 絶対的信頼性:変動係数(CV)

    • 相対的信頼性:級内相関係数(ICC)
      を評価した。さらに、HRV指標を平均iRRで数学的に補正した場合の信頼性も算出した。

  • 結果:

    • 仰臥位・立位ともに、3回の測定間でHRV指標に有意差は認められなかった(p>0.05)。

    • 仰臥位では、時間・周波数領域のICCは0.65–0.89、CVは0.9–19.8%。

    • 立位では、ICCは0.35–0.89、CVは1.1–34.8%であり、時間領域指標のICCが高い傾向。

    • iRRaverage による数学的補正後も、ICCおよびCVはわずかに変化するのみで、HRV信頼性に大きな影響はなかった。

  • 結論:
    若年健常男性において、HRVを平均iRRで補正しても、HRV解析の信頼性への影響は小さく有意ではなかった。HRVの信頼性は、体位およびどの指標を用いるかに依存する。仰臥位・立位ともに、r-MSSDおよびHF帯といった副交感神経指標は有望な指標といえる。


Background(背景)

  • HRVは、心拍間隔のゆらぎ(R–R間隔の変動)を反映する指標であり、非侵襲的に自律神経機能、特に心臓自律神経調節を評価するために広く用いられている。

  • 低HRVは、健常者においても予後不良と関連し、糖尿病、高血圧、がん、心筋梗塞、透析患者、急性冠症候群など、多くの疾患で予後指標としての意義が示されている。

  • スポーツ科学では、HRVは運動トレーニングの急性・慢性効果を評価し、過負荷・オーバートレーニングを防ぐためのモニタリング指標として活用されている。

  • HRVの臨床・スポーツ応用が広がる一方で、日をまたいだ再現性(interday reliability) は、主に単一の体位でしか検討されていないケースが多く、臨床・研究の解釈には限界があった。

  • さらに、心拍数とHRVの間には数学的な関係があり、HR低下に伴って自律神経機序とは無関係にHRVが増大しうることが報告されている(HR低下=iRRの延長により変動幅が見かけ上増える)。運動トレーニングなどでHRが非自律神経性に低下する場合、この数学的バイアスがHRVの解釈を歪める可能性がある。

  • そのため、HRV指標を平均iRRで補正(除算や2乗など)してHRの数学的影響を抑える手法が提案されており、その妥当性は薬理学的ブロックや両側頸部迷走神経切断を用いた実験で示されている。


Methods(方法)

対象

  • 人数: 37名の若年男性

  • 年齢: 23.1±4歳

  • BMI: 25.1±3 kg/m²

  • 身体活動レベル: IPAQ により評価し、中等度69.8%、高強度30.2%と分類。

  • 主な除外基準:

    • 20–30歳以外

    • 喫煙者

    • 心血管疾患やその他の疾患・症状あり

    • 筋骨格系障害

    • 薬物服用

    • 指示不遵守またはデータ取得期間中に薬物治療開始(n=3除外)

測定環境

  • 静かな臨床ラボ(室温21–24°C)、午後2–5時の間に測定。

  • 測定前48時間は、カフェイン・アルコール・薬物・運動を控えるよう指示。

実験デザイン

  • 48〜72時間の間隔で3回の来所

  • 各回で同じ標準化されたHRV測定プロトコルを実施。

手順

  1. 仰臥位で10分安静。

  2. その後、5分間のiRRを仰臥位で記録。

  3. ベッドサイドで被験者に能動的に立位(起立)をとらせ、立位3分後から再度5分間のiRRを記録。

  4. 呼吸は自然呼吸。呼吸数は視認でモニタリングし、カウント。

計測機器・解析

  • 心拍計: Polar V800(R–R間隔の取得)

  • 解析ソフト: Kubios HRV(MATLAB版 2.0, Kuopio, Finland)

  • R–R列はビートごとに目視で確認し、スパイクやアーチファクトは削除(全iRRの1%未満)。

  • 時間領域指標:

    • SDNN:正常iRRの標準偏差

    • r-MSSD:隣接する正常iRR差の二乗平均平方根

  • 周波数領域指標:

    • LF:0.04–0.15 Hz(ms²)

    • HF:0.15–0.50 Hz(ms²)

    • LFn.u, HFn.u:LFとHFの絶対値から正規化した%表現

数学的補正

  • 時間領域(SDNN, r-MSSD):

    • 対応する平均iRR(ms)で割る。

  • 絶対パワー(LF, HF):

    • 対応する平均iRR(s)²で割る。

  • 正規化指標(LFn.u, HFn.u)は相対寄与率であり、パワーそのものではないため補正対象外。

統計解析

  • 多くの変数で正規性が破綻したため、信頼性解析では**自然対数変換(Ln)**を実施。

  • 3回の測定間の差:ノンパラメトリック Friedman 検定(有意時はDuncanの事後検定)。


Results(結果)

被験者特性

  • 年齢:23.1±4歳

  • BMI:25.1±3 kg/m²

  • 身体活動レベル:中等度69.8%、高強度30.2%。

3回測定間の安静時指標(Table 1)

  • HR(bpm):

    • 仰臥位:Trial1 61 (55; 73), Trial2 62 (55; 68), Trial3 65 (57; 72), p=0.21

    • 立位:Trial1 72 (63; 87), Trial2 75 (65; 86), Trial3 78 (67; 89), p=0.11

  • 呼吸数(breaths/min):

    • 仰臥位:15 (12; 17), 15 (14; 17), 15 (11; 18), p=0.68

    • 立位:16 (13; 17), 16 (14; 18), 15 (13; 17), p=0.09

  • 収縮期血圧 SBP(mmHg):

    • 仰臥位:112 (111; 119), 114 (112; 120), 113 (111; 115), p=0.14

    • 立位:113 (112; 114), 116 (111; 120), 114 (111; 119), p=0.81

  • 拡張期血圧 DBP(mmHg):

    • 仰臥位:75 (69; 80), 72 (65; 80), 72 (66; 80), p=0.22

    • 立位:70 (62; 75), 70 (66; 72), 71 (75; 61)(※原文まま), p=0.39
      → いずれも有意差なし(p>0.05)。

HRV指標(補正なし、Table 2)

仰臥位:

  • Mean iRR (ms):

    • 988 (872; 1008), 1001 (807; 1045), 958 (854; 1041), p=0.09

  • SDNN (ms):

    • 75.4 (63.8; 96.1), 74.3 (57.3; 95.5), 81.3 (62.9; 94.1), p=0.50

  • r-MSSD (ms):

    • 61.9 (48.5; 86.1), 57.3 (40.1; 93.4), 62.4 (50.3; 89.2), p=0.72

  • LF (ms²):

    • 1223 (861; 2319), 1309 (793; 2392), 1484 (1054; 2172), p=0.46

  • HF (ms²):

    • 1458 (931; 2894), 1073 (678; 3063), 1516 (1003; 2844), p=0.36

  • LFn.u (%):47.3 → 50.5 → 50.5, p=0.53

  • HFn.u (%):50.7 → 49.3 → 49.3, p=0.56

立位:

  • Mean iRR (ms):789 → 753 → 739, p=0.12

  • SDNN (ms):61.8 → 54.6 → 52.3, p=0.64

  • r-MSSD (ms):33.2 → 28.2 → 26.5, p=0.17

  • LF (ms²):1519 → 1510 → 1446, p=0.92

  • HF (ms²):416 → 322 → 336, p=0.46

  • LFn.u (%):80.5 → 83.7 → 82.1, p=0.25

  • HFn.u (%):19.4 → 15.6 → 17.9, p=0.56

→ いずれのHRV指標でも、3回の測定間に統計的な有意差は認められなかった(p>0.05)。

信頼性(補正なし、Table 3)

仰臥位(Ln変換後):

  • ICC範囲:0.65–0.89

    • Mean iRRLn:ICC 0.89, CV 0.9% (0.7–1.1)

    • SDNNLn:ICC 0.65, CV 5.4% (4.1–6.8)

    • r-MSSDLn:ICC 0.78, CV 6.1% (4.3–7.8)

    • LFLn:ICC 0.65, CV 6.3% (4.7–7.9)

    • HFLn:ICC 0.83, CV 6.6% (4.9–8.4)

    • LFn.u:ICC 0.75, CV 19.6% (15.5–23.6)

    • HFn.u:ICC 0.75, CV 19.8% (15.1–24.5)

立位(Ln変換後):

  • ICC範囲:0.35–0.89

    • Mean iRRLn:ICC 0.87, CV 1.1% (0.8–1.3)

    • SDNNLn:ICC 0.89, CV 4.5% (3.4–5.6)

    • r-MSSDLn:ICC 0.86, CV 7.8% (5.9–9.8)

    • LFLn:ICC 0.35, CV 9.9% (4.8–15.1)

    • HFLn:ICC 0.83, CV 9.4% (6.3–12.4)

    • LFn.u:ICC 0.41, CV 12.3% (7.7–16.8)

    • HFn.u:ICC 0.63, CV 34.8% (26.6–42.9)

→ 時間領域指標(特にr-MSSD, SDNN)は仰臥位・立位ともICCが高く、CVも比較的小さい。正規化指標(LFn.u, HFn.u)は%指標であり、CVが大きく見える。

信頼性(平均iRRで補正後、Table 4)

仰臥位:

  • SDNNLn:ICC 0.60 (0.31–0.78), CV 11.6% (-5.5–18.7)

  • r-MSSDLn:ICC 0.74 (0.56–0.86), CV 11.9% (-13.4–37.5)

  • LFLn:ICC 0.63 (0.36–0.79), CV 6.1% (-3.1–15.3)

  • HFLn:ICC 0.81 (0.68–0.89), CV 7.4% (-2.8–17.6)

立位:

  • SDNNLn:ICC 0.88 (0.79–0.93), CV 7.9% (-2.9–18.8)

  • r-MSSDLn:ICC 0.87 (0.79–0.93), CV 16.9% (-16.3–50.2)

  • LFLn:ICC 0.32 (-0.15–0.63), CV 9.3% (-21.9–39.8)

  • HFLn:ICC 0.84 (0.73–0.91), CV 7.1% (-8.3–22.4)

→ 補正後もICC・CVは全体として大きくは変わらず、「数学的補正はHRV信頼性に対して小さな影響にとどまる」と結論づけられている。


Discussion(考察)

  • 本研究の主な結論は、

    1. HRV指標を平均iRRで補正しても、時間領域・スペクトル指標の再現性は大きく変化しないこと、

    2. HRVの信頼性は、体位(仰臥位 vs 立位)と指標の種類に依存すること、
      である。

  • 仰臥位では、時間・周波数領域ともに「中等度〜高い」ICCが得られた一方、立位では時間領域指標のICCが高く、LF帯のICCが低い(0.35)など、指標ごとにバラつきが見られた。

  • 先行研究と比較すると、若年男性では時間領域指標の再現性がスペクトル指標より高いこと、立位でのHRV変動が比較的小さいことなどが報告されており、本研究結果はその一部と整合的である。

  • 一方で、小児や高齢女性では立位での再現性が同様とは限らず、年齢・性別・体位の組み合わせによりHRV信頼性の特徴は変わる可能性が指摘されている。

  • 正規化スペクトル指標(LFn.u, HFn.u)は、相対的な%指標であるため、CVが大きく見え、生物学的変化以上に変動が誇張されうることが議論されている。


Novelty compared to previous studies(先行研究との新規性)

  • 先行研究では、HRVの再現性は

    • 単一体位(多くは仰臥位)

    • 特定の集団(小児、高齢者、アスリートなど)
      で検討されることが多く、仰臥位と立位の両方で同一被験者を3回測定し、時間・周波数領域指標を包括的に比較した研究は限られている。

  • また、HRの数学的影響を最小化するために平均iRRによる補正を施したHRV指標の「再現性」を、体位別に系統的に評価した点が大きな新規性である。

  • 「iRRでの補正が予後予測能を高める」という先行報告はあったが、その補正が日をまたいだ信頼性にどう影響するかを検証した点で、本研究は方法論的な貢献をしている。


Limitations(限界)

  • 対象は若年・健康・身体的に活動的な男性に限定されており、女性、高齢者、疾患患者などには外挿できない。

  • サンプルのBMIは25.1±3 kg/m²であり、正常体重〜過体重の範囲が混在している。BMIは肥満指標としては限界があるが、対象者がレジスタンストレーニング等で筋量が多い可能性もあり、BMIだけでは体脂肪率を十分に反映しない点が指摘されている。

  • HRVへのBMIの影響は、身体活動レベルが高い場合には相殺される可能性があり、その意味で今回の結果は「活動的な若年男性」に特化したものである。

  • 測定は5分間の短時間HRVに基づいており、長時間記録(例:24時間Holter)での再現性とは異なる可能性がある。


Potential Applications(応用可能性)

  • 本研究の結果から、「何をどの体位で測るべきか」のガイドライン的示唆が得られる:

    • r-MSSD と HF帯

      • 仰臥位・立位ともICCが高く、副交感神経活動を反映する指標として急性・慢性の変化をモニタリングするのに有望

    • HRVの再現性が比較的高く、かつ体位変更にもある程度ロバストであるため、

      • トレーニング負荷管理

      • 薬理・非薬理介入の自律神経評価

      • 日々のコンディションチェック
        に実務的に利用しやすい。

  • 一方で、**正規化指標(LFn.u, HFn.u)**はCVが大きく、日々の変動を解釈する際には「数学的な%変化」と「生理学的な意味」の切り分けが必要であることが示唆される。

  • HRV指標を平均iRRで補正しても再現性が大きく損なわれないことから、

    • 予後予測やリスク層別化を目的とする臨床研究では、HRの数学的影響を減らすための補正手法として、比較的安心して採用できる可能性がある(ただし適用範囲は今後の研究で要検証)。

  • 研究デザインの観点では、

    • 仰臥位と立位で異なるICC・CVを示したことから、目的に応じて「どの体位で測定するか」をあらかじめ決めておく必要性が強調される。

※AIツールであるConsensus(研究論文の要約)およびPaper Interpreter(Japan)(日本語での論文解釈)を活用して作成しました。原文をご覧ください

HRVは“ゆらぎ”を扱うため、「毎回ちがう値が出るのでは?」と思われがちです。
しかし、この研究では仰臥位・立位いずれも、48〜72時間あけた3回測定で安定した再現性が得られることが示されました。
特に RMSSD(CVRR相当)やHFなど副交感神経系の指標はとても安定 しています。
きりつ名人の起立負荷測定でも、安静 → 起立直後 → 立位の変化を高精度に捉えます。
この研究結果から、
体位が変わってもHRVは大きくブレない
副交感神経系の指標(CVRR)が特に安定して測れる
という点は、きりつ名人にとって大きな裏づけになります。
さらに論文では、
心拍数の影響を補正すると再現性がより高まる ことも示されています。
きりつ名人はR-R間隔を正確に拾うため、この補正効果も最大限に活かせます。
結果として、
✔ 安静と起立の違いがはっきり見える
✔ 副交感神経の変化が安定して評価できる
✔ 毎回のブレが小さい
という特長が生まれ、
研究でも臨床でも「反応の強さ」「変化の方向」を安心して比較できる—これが、きりつ名人の強みです

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