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起立でみる思春期メンタルヘルス

こんにちは!こころです。
AIと一緒に、研究に役立つ心拍変動解析の情報をお届けしています。
今回ご紹介するのは、「Complex cardiac vagal regulation to mental and physiological stress in adolescent major depression」という論文です。この研究は、思春期のうつ病患者における心臓迷走神経の制御機能を、精神的および生理的ストレッサーへの反応性という観点から詳しく探ったものです。

Complex cardiac vagal regulation to mental and physiological stress in adolescent major depression
思春期の大うつ病性障害における精神的および生理的ストレスに対する複雑な心臓迷走神経調節

ジャーナル名と発表年 (Journal Name & Publication Year)
Journal of Affective Disorders, 2019

第一著者および最終著者 (First and Last Authors)
Andrea Mestanikova, Ingrid Tonhajzerova

第一所属 (First Affiliations)
Jessenius Faculty of Medicine, Comenius University, Martin, Slovakia

要旨 (Abstract)
思春期の大うつ病性障害 (MDD) において、心臓迷走神経制御が低下していることは知られているが、異なるタイプのストレッサーに対する神経心臓反射制御については明確ではない。本研究では、思春期MDD患者における心拍変動(HRV)の線形および非線形解析を用いて、精神的および生理的ストレッサーに対する副交感神経反射機能を評価した。結果として、MDD群は安静時およびストレスプロトコルの各段階でHRVパラメータが有意に低下していたが、精神的ストレッサー(Go/NoGoテスト)への反応では差が見られず、生理的ストレッサー(起立試験)に対するHRV指標の反応性が顕著に増加していた。

背景 (Background)
自律神経系 (ANS) は、生体の恒常性維持や適応性のための重要な調節システムであり、感情および認知プロセスとANS制御の相互作用が長年注目されてきた。特に心拍の変化と感情調節との関係が研究されており、うつ病性障害では心臓迷走神経活動が減少している可能性が示唆されている。本研究では、思春期MDD患者における複雑な心臓迷走神経反射機能を、精神的および生理的ストレッサーを用いて評価した。

方法 (Methods)
11〜17歳の思春期MDD患者60名(平均年齢14.9歳、40名が女子)と年齢・性別を一致させた健常者60名を対象に、心電図を用いて以下のストレスプロトコルを実施した:ベースライン、Go/NoGoテスト、回復期、仰臥位、および起立試験。HRV指標としてRR間隔、pNN50、rMSSD、HF-HRV、ポアンカレプロット(SD1)、および象徴動力学(2UV%)を評価し、ストレッサーへの反応性を百分率変化で表現した。

結果 (Results)
MDD群は、ストレスプロトコルの各段階で健常者よりも有意にHRV指標が低下していた。ただし、仰臥位での象徴動力学指標2UV%には差がなかった。また、起立試験に対するHRV指標の反応性はMDD群でより顕著であったが、Go/NoGoテストへの反応性には差が見られなかった。


この論文では安静時の心臓迷走神経制御だけでなく、起立負荷時の変化の有用性についても強調しています。特に、以下の点がその主張を裏付けています。

  1. 起立負荷時の迷走神経撤退の顕著な反応性
    結果セクションにおいて、起立試験に対するHRV指標の反応性がMDD群で顕著に増加していることが報告されています。このことは、生理的ストレッサーに対する神経心臓反射機能の異常を示唆しており、通常の安静時測定では捉えられない重要な情報を提供しています。
  2. 生理的ストレッサーとしての起立試験の価値
    議論セクションで、MDD患者では起立試験中により顕著な迷走神経撤退が観察され、これは思春期のMDDに特有の神経心臓反射機能異常を反映していると述べています。このことから、起立試験が思春期MDD患者の心臓迷走神経制御の評価において有用であると示唆されています。
  3. ストレス反応評価の包括性
    起立試験を含む生理的ストレスとGo/NoGoテストを含む精神的ストレスの両方を評価することで、複雑な心臓迷走神経制御の全体像を捉えられると論じています。これにより、単なる安静時のHRV測定では得られない詳細な知見が得られるとしています。

これらの点から、安静時のみに依存せず、起立負荷時の変化を評価する重要性が本論文で明確に述べられています。

※AIツールであるConsensus(研究論文の要約)およびPaper Interpreter(Japan)(日本語での論文解釈)を活用して作成しました。原文をご覧ください。

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