
こんにちは!こころです。
AIと一緒に、研究や臨床の現場で役立つ心拍変動(HRV)解析の論文をご紹介しています。
今日は、心拍変動(HRV)研究の土台をつくった重要な論文をご紹介します。
HRVの周波数解析(LF・HF)にはさまざまな手法がありますが、中でも MEM(最大エントロピー法) は、短時間のデータからでも安定した周波数スペクトルを得られる “高精度な解析法” として知られています。
今回取り上げる研究は、75名という比較的大規模な対象で HRV指標の自然変動と再現性 を詳細に調べ、MEM法が実際の場面でどれだけ信頼できるかを明らかにした代表的な論文です。
きりつ名人も MEM 法を採用しており、本研究はその解析手法の妥当性を裏づける重要なエビデンスになります。
では、この研究のポイントを一緒に見ていきましょう。
① 解析法の再現性 MEM法
日本人男性における心拍変動の個人間・個人内変動
Inter- and Intra-Individual Variations of Heart Rate Variability in Japanese Males
日本人男性における心拍変動の個人間・個人内変動
Title(English & Japanese)
Inter- and Intra-Individual Variations of Heart Rate Variability in Japanese Males
日本人男性における心拍変動の個人間および個人内変動
Journal Name & Publication Year(掲載誌・発行年)
Journal of Physiological Anthropology, Vol.26, No.2, pp.173–177, 2007年掲載
First and Last Authors(第一著者・最終著者)
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第一著者:Hiromitsu Kobayashi
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最終著者:Hiromitsu Kobayashi(単著論文)
First Affiliations(第一所属)
Ishikawa Prefectural Nursing University, Ishikawa, Japan
Abstract(要約)
75名の健常な日本人男性(20–61歳)を対象に、立位および仰臥位の2姿勢条件下で心拍変動(HRV)の周波数成分〔低周波成分(LF)、高周波成分(HF)〕と平均心拍数(HR)を、1人あたり4~8回(平均6回)繰り返し測定し、個人間変動(interV)と個人内変動(intraV)に分けて検討した。
HRのintraV%は立位15.8%、仰臥位12.9%であった。HFのintraV%は立位31.5%、仰臥位27.8%、LFのintraV%は立位26.5%、仰臥位35.5%であった。interVの変動係数(interCV)は立位でHR 14.9%、HF 41.4%、LF 48.4%、仰臥位でそれぞれ16.2%、42.9%、44.2%であった。intraVの変動係数(intraCV)は立位でHR 5.0%、HF 19.7%、LF 21.2%、仰臥位で4.7%、20.1%、23.0%であった。対数変換したHRV指標では、interCVが14~16%、intraCVが6~7%と大きく減少した。
HRV指標は加齢とともに低下し、決定係数(r²)は非対数値で14~34%、対数変換後で9~15%であり、観察されるinterVのうち約14~34%(対数変換後は9~15%)が年齢差に起因すると推定された。一方、HR自体は年齢による変化を示さなかった。
Background(背景)
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生理人類学において、個体差は重要なテーマであり、genotypeと環境要因の相互作用による**個人間変動(interV)と、同一個体内での測定のばらつきである個人内変動(intraV)**を区別して考える必要がある。
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心拍変動(HRV)は自律神経活動を反映する非侵襲指標として広く利用されており、多くの研究で遺伝要因や年齢、血圧、遺伝子多型などとの関連が報告されている。
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しかし、HRVの再現性や日内・日差変動についての結論は必ずしも一致しておらず、特にintraVがどの程度大きいのかについてはまだ明確でない。
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本研究は、日本人男性を対象に、HRVのinterVとintraVを定量的に分離し、その寄与率と変動係数を姿勢・年齢・対数変換の有無などの観点から評価することを目的とした。
Methods(方法)
対象
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被験者:健常日本人男性 75名
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年齢範囲:20~61歳
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心疾患その他の明らかな疾患を有さない健康成人
測定条件
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姿勢:
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立位(standing)
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仰臥位(supine)
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測定時刻:実験期間の順序による影響を抑えるため調整し、HRV測定は主に午後(13:00–16:00)に実施。
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測定回数:1日2~4回、初回から3週間後まで同様の手順を繰り返し、各被験者4~8回(平均6回)の測定。
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呼吸:本研究では呼吸コントロールは行っていない。
計測機器・データ処理
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腕時計型心拍計 Polar S8xx系(Polar S801i, Finlandと明記)を用いてR–R間隔を1 msec分解能で記録。
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R–R間隔系列から心拍数(bpm)に変換し、5 Hz等間隔データへ補間。
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1024点(約204.8秒)のデータを用いて高速フーリエ変換(FFT)によりパワースペクトル解析を実施。
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周波数帯域:
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HF:0.15–0.35 Hz
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LF:0.04–0.15 Hz
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HRV指標としてLFパワー、HFパワーを算出し、一部では自然対数変換(lnHF, lnLF)を行った。
統計解析
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一元配置の反復測定分散分析(one-way repeated ANOVA)を用いて、総分散をinterVとintraVに分解。
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寄与率:
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interV% =(interV平方和 / 総平方和)×100
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intraV% = 100 − interV%
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変動係数:
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interCV, intraCVを、分散成分から算出(CV = 100×標準偏差/平均)。
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HRVと年齢との関係について回帰分析を行い、回帰式、相関係数r、決定係数r²(%)を算出。
Results(結果)
1. HR・HF・LFのinterV%とintraV%
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HRのintraV%:
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立位:15.8%
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仰臥位:12.9%
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HFのintraV%:
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立位:31.5%
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仰臥位:27.8%
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LFのintraV%:
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立位:26.5%
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仰臥位:35.5%
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→ HRに比べて、HF・LFなどHRV成分の方が個人内変動の寄与が大きいが、それでも全体から見れば30%前後にとどまり、残りは主として個人間差で説明される。
2. interCVおよびintraCV(非対数値)
立位
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HR:interCV 14.9%、intraCV 5.0%
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HF:interCV 41.4%、intraCV 19.7%
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LF:interCV 48.4%、intraCV 21.2%
仰臥位
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HR:interCV 16.2%、intraCV 4.7%
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HF:interCV 42.9%、intraCV 20.1%
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LF:interCV 44.2%、intraCV 23.0%
→ HRV指標ではinterCVが40~50%と非常に大きく、一方intraCVは20%前後にとどまる。HR自体のintraCVは5%以下と小さい。
3. 対数変換指標(lnHF, lnLF)の変動係数
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lnHF, lnLFのinterCV:おおむね14~16%
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lnHF, lnLFのintraCV:おおむね6~7%
→ 対数変換により、interCV・intraCVとも大きく減少し、特にintraCVが一桁台まで縮小。
4. 年齢との関連(Table 3)
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HRV指標(HF, LF, lnHF, lnLF)は加齢とともに減少する傾向を示したが、HR自体は年齢に対して有意な変化を示さなかった。
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非対数値HF・LFの決定係数r²は14~34%、対数変換後のlnHF・lnLFでは**9~15%**であり、観察されるinterVのうちその程度が年齢に起因すると解釈できる。
Discussion(考察)
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個人間変動の大きさ
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HRV指標のinterCVは40~50%と大きく、血圧や赤血球数、尿酸値など、他の生理・生化学指標の報告と同程度、あるいはそれ以上であったと議論されている。
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HRのinterCVは約15~16%であり、こちらも先行研究の心拍数や対数変換HRVのCVと同程度である。
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個人内変動の相対的な小ささ
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HRのintraV%は約13~16%、HF・LFのintraV%は約30%前後であるが、絶対的な変動係数はHRで5%以下、HF・LFでも20%前後であり、「再現性は比較的高い」と判断されている。
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対数変換後のHRV指標ではintraCVが6~7%に低下し、イスラエルの被験者を対象とした先行研究で報告されたintraCV(HF 12.1%、LF 11.5%)よりも小さい値であったと述べられている。
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姿勢の影響
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LF成分では特に姿勢による変化がHFより顕著であり、仰臥位でintraV%が高い(35.5%)ことから、血圧調節や交感神経活動との関連が示唆されている。
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立位・仰臥位の違いは、個体間差よりも個体内変動に強く影響する可能性があると議論されている。
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年齢の影響
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HRV指標は加齢とともに低下し、特にHFで顕著。
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とはいえ、年齢によって説明されるinterVは最大でも34%であり、残りは遺伝要因や生活習慣など、他の要因によると考えられる。
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時間スパン(日内・日差変動)の影響
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本研究のintraVには、日内変動と日差変動の両方が含まれている。
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先行研究では、日内変動と長期(数か月)の変動に大きな差がないことも報告されており、本研究でも時間スパンによる違いは大きくない可能性が示唆される一方、著者はこの点については実験デザイン上の制約から結論が限定的であると述べている。
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Novelty compared to Previous Studies(先行研究との新規性)
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interVとintraVを明確に分離して定量化
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HRVを「個体間」と「個体内」の2種類の変動に分解し、それぞれの**寄与率(interV%, intraV%)と変動係数(interCV, intraCV)**を具体的な数値として示した点が特徴。
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日本人男性75名という比較的大規模なサンプル
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同一プロトコルで繰り返し測定を行い、日本人男性集団におけるHRVの再現性と個体差の大きさを定量的に示した。
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対数変換の効果を系統的に検討
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lnHF・lnLFに対してinterCV, intraCVを求め、対数変換が変動を14~16%、6~7%程度に抑えうることを示し、「HRVの統計解析では対数変換が有効」であることを実データで裏付けた。
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年齢寄与の割合を明確に提示
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interVのうち、年齢によって説明される割合を非対数値で14~34%、対数変換後で9~15%と定量的に示し、加齢以外の要因が依然として大きいことを明らかにした。
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Limitations(限界)
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対象が日本人男性に限定
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被験者は男性のみであり、女性や他民族への一般化には注意が必要。
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呼吸コントロールを行っていない
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呼吸数や呼吸パターンはHF成分に大きく影響するため、呼吸を統制していないことがintraVの一部を増大させている可能性がある。
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測定条件・時間スパンの制約
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測定は主に午後の数時間帯に限られており、24時間を通した日内リズムや長期(数ヶ月以上)の変動は評価していない。
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著者自身も、「時間スパンの効果を検討するには本研究のデザインでは不十分であり、今後の検討が必要」と述べている。
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指標がLF・HFに限定
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時間領域指標(SDNN, RMSSDなど)や非線形指標は扱っておらず、HRVの全体像を網羅してはいない。
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Potential Applications(潜在的応用・インプリケーション)
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HRV研究における測定回数・デザインの指針
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intraCVが比較的小さい(特に対数変換後6~7%)ことから、一定の条件下では少ない繰り返し測定でも妥当な評価が可能であることを示唆し、臨床研究や疫学研究のプロトコル設計に役立つ。
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対数変換HRV指標の利用推奨
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lnHF, lnLFにより変動が小さくなるため、統計解析の前処理としての対数変換の有用性を裏付けるデータとなる。
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個体差の要因解析の基盤データ
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interVが非常に大きく、年齢では最大34%しか説明されないという結果は、今後、遺伝子多型(例:RAS関連SNP)や生活習慣、ストレス、疾病との関連解析を行う際の基礎情報となる。
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臨床的応用(モニタリング・リスク評価)
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HRVのintraVが小さいということは、同一個人内での変化(増減)が病態変化の指標として解釈しやすいことを意味し、交感・副交感バランスの経時モニタリングや治療効果判定に利用しやすい。
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職場・地域住民コホートでの応用
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腕時計型心拍計で取得可能なHRVの再現性が一定程度確認されたことで、大規模コホートにおけるフィールド測定への応用が現実的であることを示している。
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※AIツールであるConsensus(研究論文の要約)およびPaper Interpreter(Japan)(日本語での論文解釈)を活用して作成しました。原文をご覧ください。






