■田中寛人,有田幹雄(和歌山県立医科大学附属病院 紀北分院内科)
【目的】
動脈硬化性疾患のマーカーとしてアラキドン酸(AA)とエイコサペンタエン酸(EPA)の比であるEPA/AAが報告されている。一方で自律神経系の異常は、高血圧の成因に関与していることが示されている。今回、血中EPA/AA、ドコサペンタエン酸(DHA)と自律神経機能との関連を調査した。
【対象と方法】
和歌山県下での動脈硬化健診に参加した住民343名(平均年齢61.1±9.1歳、男性141名、女性202名)を対象とした。動脈硬化健診を行ったうえで、ガスクロマトグラフィー法でAA、EPA、ドコサヘキサエン酸(DHA)を測定した。自律神経機能は、起立負荷検査で、座位(1分)→立位(2分)→座位(2分)の簡便法で行い、検査中は左上腕部より血圧を1分間隔で測定するとともに、心電図R-R間隔を記録して評価した。
【結果】
EPA/AAは、安静時CVRR、安静時CCVHF、安静時CCVLFと有意な負の相関を認めた。またDHAも同様に安静時CVRR、安静時CCVHF、安静時CCVLFと有意な負の相関を認めた。しかしながら、EPA/AAとDHAは、年齢とも負の相関を認めた。年齢による影響が示唆された。そこで、年代ごとに検討したところ70歳代においてEPA/AAは、⊿LH/HFと安静時平均心拍と有意な負の相関を認めた。DHAは、安静時LF/HFと正の相関の傾向(p=0.0522)、⊿LF/HFと負の相関の傾向(p=0.0703)を認めた。
【結語】
EPA/AA、DHAは、自律神経機能への関与が示された。とくに70歳以上の高齢者において血中EPA/AAが高値であれば、交感神経の変動の指標である⊿LF/HFが抑えられ平均脈拍も抑えており、循環動態を安定化していた。