地域における自律神経機能評価の実践

第2回臨床自律神経機能Forum

■相場繁(特定非営利活動法人日本臨床研究支援ユニット)

【背景】
2011年3月に発生した東日本大震災及び東京電力原子力発電所事故に対し、弊法人は医療支援プロジェクト「きぼうときずな」として、福島県自治体に保健師及び看護師の派遣を行なっている。
2015年4月より、復興庁補助事業「心の復興」事業の一環として、健康増進に関する正しい知識の提供を目的に、福島県内のスーパー店舗における簡易健康チェックブースの設置を行っている。
【目的】
地域住民に対する健康増進知識の提供の方法として、自律神経機能評価を実践した。
【方法】
2017年9月24日、福島県福島市内のヨークベニマル平野店における簡易健康チェックブースにおいて、「きりつ名人ヘルスケア」により、心の元気度(安静時CVRR)、緊張度(安静時LF/HF)、ストレス回復力(安静時ccvHF)、ストレス反応力(起立時ΔCVRR)、ストレス検出力(起立時ΔLF/HF)を測定し自律神経機能評価を実施した。
測定結果に対し、独自に作成したパンフレット「自律神経って何?」を利用し、保健師による結果説明及び希望者に対する生活における助言を行った。
測定対象者に対して、NPSスコア(家族や友人に勧める可能性)、健康意識啓発度(健康を保つために何をするべきか分かったか)に関するアンケートを行なった。
【結果】
簡易健康チェックブースを設置した4時間(11時から15時)で、全45名の測定を行なった。
測定対象者の年齢は平均65.8歳(最大82歳、最少20歳)であった。
データ安定度について、安静時 97.6 ± 5.1 %、起立時 94.9 ± 6.6 %、立位時 97.5 ± 6.1 %、であった。安静時、起立時、立位時のいずれかで90%未満を示した者は8名であった。
NPSスコア、健康意識啓発度について、同会場での測定対象者(N=37)は、自律神経機能評価を実施していない別会場での測定対象者(N=41)と比べたところ、NPSスコア(4.2 ± 1.2 v.s. 3.9 ± 1.1)、健康意識啓発度(4.3 ± 0.9 v.s. 4.4 ± 0.7)であった。
【考察】
地域住民への心身の影響を評価する方法として、きりつ名人ヘルスケアによる自律神経機能測定は、データ安定度が高く評価に支障がないことが示された。
NPSスコア、健康意識啓発度について明確な差は認められなかったものの、自律神経機能の評価を通じて住民とのコミュニケーションを深めることが出来たと考えている。今後も、健康増進知識の提供を目的に、地域において実践を重ねていく。

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