Reflex名人を活用した論文です。
■Real‐Time Analysis of the Heart Rate Variability During Incremental Exercise for the Detection of the Ventilatory Threshold
J Am Heart Assoc 2018年1月7日、7(1)。pii:e006612。doi:10.1161 / JAHA.117.006612。
Yasuyuki Shiraishi, Yoshinori Katsumata, Taketaro Sadahiro, Koichiro Azuma, Keitaro Akita, Sarasa Isobe, Fumiaki Yashima, Kazutaka Miyamoto, Takahiko Nishiyama, Yuichi Tamura, Takehiro Kimura, Nobuhiro Nishiyama, Yoshiyasu Aizawa, Keiichi Fukuda, Seiji Takatsuki
[要約]
心血管疾患の強いリスク因子である血清コレステロールおよび血圧を低下させるために、有酸素運動を40分間、週3-4回実施することが、多くのガイドラインで推奨されている。しかし、患者が運動を行う場合、脈拍数やエルゴメーターの負荷量以外に運動強度を客観的に把握する方法がなく、予想以上の低強度または強強度の運動を実施している可能性があり、運動療法の効果を最大限に生かせていないことが懸念される。この点が、臨床におけるジレンマであり、毎日の体調に合わせた、リアルタイムな有酸素レベルでの運動を提供するシステムの開発は喫緊の課題である。
我々は、2014年より最大エントロピー法を用いて漸増運動負荷中の心拍変動を連続的に解析する研究を開始した。これまでの心拍変動解析によく使用されていたホルター心電図等ではR波の信号を125Hzで採取しており、解像度が粗いため、心拍数が150~200bpmまで上昇する運動時では心拍変動を正確に把握することが困難であった。そこで、R波の信号を1000Hzの精度で採取する技術を開発し(自律神経解析用心拍計LRR-03®、株式会社クロスウェル)、そのもとで最大エントロピー法を用いて、30秒間の心拍変動を1拍ごとずらしながら、漸増運動負荷中のHF, LF, L/Hを連続的に解析し、瞬時に画像化することに成功した(図1および動画1,2)。さらに、心拍変動の周波数解析と呼気ガス分析における測定値(酸素摂取量等)との関係を検証した。運動開始前はHF成分が優位であったが、運動開始後からHF成分は徐々に低下し、5以下に低下するのと同時にL/Hが上昇した。その後、運動終点まで、HF成分は1以下で推移し、L/Hはダイナミックに変動しつつ高値を維持した。また、HF優位からL/H優位に切り替わるタイミング(心拍変動変換点;HRVT (HRV threshold):HFが8連続で5以下となり、CCV L/Hが0.35以上に上昇するポイント)が、呼気ガス分析による嫌気性代謝閾値と一致することが健常ボランティアおよび心筋梗塞患者で示された(図2:健常ボランティア)。この結果は、運動中の心拍変動のリアルタイム周波数解析によって、嫌気性代謝閾値、つまりは有酸素運動の限界が予測可能であることが示唆された。
心拍変動のリアルタイム周波数解析と心肺運動負荷検査を組み合わせることで、嫌気性代謝閾値の決定がより正確になった。また、この技術とウェアラブル機器を用いることで、運動中に心拍数だけでなく、心拍変動をモニタリングし、適切な運動強度(有酸素運動レベル)をリアルタイムに提供することが可能となる。今後、その日の体調に合わせた有酸素運動レベルでの運動を提供するプログラムの開発が進むことが期待される。