カラオケ歌唱が自律神経活動と感情に及ぼす影響の検討

第2回臨床自律神経機能Forum

■酒井博美(東北大学大学院医学系研究科内部障害学分野)

【背景】
歌唱はこれまでにもさまざまな生理学的変化に関連することが示されている。例えば、歌唱トレーニングにより、呼吸筋が鍛錬され呼吸の状態が良好になる他、神経伝達物質の変化をもたらし、免疫機能を向上させる効果も明らかとなっている(Kang J et,al., 2017)。また、最近、歌唱を娯楽として行う「カラオケ」が、長寿の人々が健康や老化防止のために行っている活動の上位にランキングしていることもマスコミで話題になった。
カラオケは、安価で手軽に楽しむことができる活動であり、日常的に取り入れることで心身に有効性があるのであれば、ストレス対策や介護予防の手段として望ましい。しかしながら、その有効性について、ストレスや身体および認知機能とも密接に関連する自律神経活動、加えて感情の両側面から検討した報告は知る限りない。そこで本研究では、カラオケが心身の活性化に有効か否かについて、自律神経活動測定と感情評価により検討した。
【方法】
44歳から64歳の健常成人男女8名(平均年齢52.9±6.24歳、男性2名)を対象に、カラオケルームにて各自好みの曲(1曲3~5分)を2曲、ローテーションをしながら歌唱し、カラオケ歌唱前・中・後における自律神経活動について「きりつ名人」および「リフレックス名人」(いずれも株式会社クロスウェル製)を用いて測定した。加えて歌唱前後の感情状態について、Profile of Mood States 2(POMS2)日本語版成人用短縮版を用いて調査した。
【結果】
自律神経活動
カラオケ歌唱時と非歌唱時で自律神経活動を比較した結果、歌唱時において非歌唱時に比べ、心拍(p<0.01)、副交感神経活動の指標とされるccvHF(p<0.01)、心拍R-R間隔のゆらぎから自律神経活動全体の大きさを示すCVRR(p<0.01)に有意な増加が認められた。また、一連のカラオケ歌唱前後における自律神経活動においても、歌唱後において歌唱前に比べ、自律神経反射(起立-安静座位CVRR)が有意に増加し(p<0.01)、心拍には減少傾向が認められた(p=0.08)。
感情
一連のカラオケ歌唱前後でPOMS2の測定値を比較した結果、7項目中「怒り‐敵意」(p=0.04)、「混乱‐困惑」(p=0.03)、「緊張‐不安」(p=0.05)、および苦痛や情動障害といった否定的気分の程度を示す「総合的気分状態」(p<0.01)が歌唱後に有意に低下し、「活気‐活力」(p<0.01)が有意に上昇した。
【考察と展望】
本研究の結果より、カラオケで歌唱することが、自律神経活動の活性化および肯定的感情の増加と否定的感情の減少に繋がることが明らかとなった。これらの結果は、歌唱による心肺機能活動の増加や気分の発散に起因するものと考えられる。今後は、対象者を増やし結果の普遍性を検討し、カラオケの健康増進や介護予防への活用の可能性を探索することが望まれる。

引用文献>Kang J, Scholp A, Jiang JJ.  A Review of the Physiological Effects and Mechanisms of Singing. J Voice. 2017. doi: 10.1016/j.jvoice.2017.07.008.

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