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HRVとストレスの関係 ― 相関では見えない傾向を多面的に検証


こんにちは、こころです!
きりつ名人の測定結果は、個別のケースでは ストレス状態をよく反映しているように見える けれど、統計解析をすると 単純な相関では見えにくいことがある んです。
でも、ちょっと待ってください! 「見えにくい」からといって、本当に関係がないのでしょうか?
実は、解析方法によって ストレスとの関連がもっと明確になる可能性がある んです。
今回は、バーチャル統計専門家 多計司先生 とクロスウェル社員の 律子さん と一緒に、きりつ名人の測定結果を使って ストレスとの関係をどう解析できるのか? を考えていきます。
「自分の研究にも使えそう!」と思ってもらえたら嬉しいです!

なお、今回統計に関する箇所はNPO法人日本臨床研究支援ユニット理事長甘利裕邦様にご監修いただきました。ありがとうございました。
NPO法人日本臨床研究支援ユニット



目次

きりつ名人の測定結果を、研究に活用できる可能性を探ろう!

多計司先生、きりつ名人の測定結果を見ていると、HRVが高すぎても低すぎてもストレスに影響していそうですね。
でも、単純な相関解析では、この関係を示すのが難しいことが多い…研究で活用するには、どんな解析をすれば良いのでしょうか?

その通りです、律子さん。
自律神経活動とストレスの関係は 単純な相関では捉えにくいことが多い んです。
そこで今回は、働いている人約1300人 の きりつ名人HC の測定データ(心拍変動解析結果+厚生労働省ストレスチェック29項目)を用いて分析しました。
特に、今回は
「HRVが高すぎても低すぎてもストレスに影響するのか?」
「起立負荷をかけることで、ストレスとの関連がより明確になるのか?」
この2つの仮説を検証しました。

なるほど!
きりつ名人の測定結果は、個別に見るとストレスとの関連がよく現れているのに、統計的な分析をすると明確な関係が見えにくいとよく言われます。
この点を解析でどう解決したのか、とても気になります!
具体的な手順を教えてください。

散布図で全体を確認することが重要

統計解析を始める前に、まずは散布図を描いてデータの分布や関係の傾向を視覚的に確認することが大切です。

分布の確認 :HRV指標の分布を確認
外れ値をグラフからも確認しましょう
単純な相関解析(ピアソン・スピアマン)
U字型回帰(2乗項を用いた非線形モデル):定量的にはU字型の傾向が統計的に有意

多計司先生

外れ値をどうすべきか検討しましょう

外れ値の扱いには注意

■ なぜ注意が必要?
外れ値は、測定誤差である場合もありますが、意味のある特殊なケースを示していることもあります。安易に外れ値を削除してしまうと、恣意的な結果操作とみなされるリスクがあります。

■ 正しいアプローチには?
✔まずは可視化(散布図など)で外れ値を確認する。
✔外れ値を含む解析と除いた解析を両方行う。
✔結果がどの程度変わるかを比較し、外れ値の影響を検討する。
✔削除の理由を明確に記述し、透明性を保つ。

■ 今回の対応
今回の解析では、外れ値は除外せずに解析を行いました。
一部のHRV指標では、外れ値を除外すると、統計的に有意であった関係が「傾向レベル」にとどまるなど、結果に影響を与えることが確認されました。
除外対象となりうるデータの一部について実際の測定データを確認したところ、測定そのものに問題は認められませんでした。このため、今回の解析では外れ値を含めた形での検討を優先しました。

相関解析をしたところ、P値が有意なものがあります。

p値や有意差だけで判断しない

多計司先生

p値や有意差だけで判断しないで!

相関係数が大きいことが重要

相関係数がどれくらい大きいか(関係の強さ)が重要であり、その結果が実際の臨床や現場でどのように解釈できるかを考えることで、意味のある研究仮説を立てることができます。
相関についてはプラスとマイナスの相関があります、相関があるとされる場合でも、p値の有意性だけでは不十分です。p値が有意(p < 0.05)であっても、必ずしも臨床的・実質的に意味があるとは限りません。視覚的・実務的な意義、傾向の一貫性などと合わせて解釈することが大切です。


今回のデータでは、相関解析では相関係数が小さいです。

多計司先生

なるほど、HRVとストレスとの関係は、単純な相関では明確に現れないということですね。
相関係数が小さい結果から「関係がない」と判断してしまうのは早計な場合もあります。
非線形な関係や特定の群間で差が見られる場合(U字型など)もあり、相関解析では見えにくくても、四分位比較やT検定では統計的に意味のある差が検出されたケースがあります。
このような傾向を見落とさないためにも、多角的な解析手法(四分位比較やT検定など)を組み合わせて判断することが重要です。そこで、HRVの値を4つのグループに分けて比較してみましょう。

四分位比較・T検定 Tukeyの多重比較

HRVデータを4つのグループに分けて、T検定で低下群と中央群、過剰群と中央群と比較してみると、
Q1(低下群)・Q4(過剰群)でストレス指標が高い(Q2(中央群)と比較して有意または傾向あり)というパターンが「立位時の心拍と イライラ感の関係」「起立-安静CVRR と 疲労感の関係」などで、高すぎても低すぎてもストレススコアが高くなるようなU字型の傾向が見られました。
なお、Tukeyの多重比較検定では、両群(Q1・Q4)でともに有意差が見られる指標は多くはありませんでした。
しかし、T検定による Q1 vs Q2、Q4 vs Q2 の個別比較では、両端の群でストレススコアが高くなるという結果が得られた指標もあり、これは「U字型の傾向があるのかもしれない」と感じさせるような興味深い結果となりました。

今回の結果から・・・

今回のデータで、今回の手順で分析した結果どのようなことが言えたのでしょうか。

今回の解析では、ストレスとの関係を検討する際、相関係数だけでは見えにくい傾向があることがわかりました。四分位比較を用いることで、これまで見えなかったHRVとストレス指標の関係が見えてくる可能性があります。

例えば…

  • 安静・立位のCVRR・CCVHFが高すぎると不安、抑うつなどのストレススコアが高まる傾向がみられました。
    HR(立位)やCVRR(起立ー安静)では、HRVが極端に高いまたは低い場合にストレススコアが高まる「U字型傾向」が示唆されました。

このような結果から、HRVの解析を適切に行うことで、ストレス状態をより評価できる可能性があるということですね!
これは、職場でのストレス評価、精神疾患のリスク評価、自律神経研究 など、さまざまな場面で応用できる可能性がありますね!「自分の研究データでも試してみたい!」と思ったら、ぜひきりつ名人を活用してみてください!

今回の解析の注意 

今回の解析について注意点などを整理しましょう。

このデータの制約

  • 本データは働いている人を対象としており、極端に悪いストレス状態の人が少ない可能性がある。
  • よりストレスの影響を詳細に検討するには、異なる対象群のデータと比較することが今後の課題。

統計解析について

統計解析では、同じ基準値やログを残していても、わずかなデータの取り扱いの差や解析条件の違いで結果が変動する場合があります。特に四分位分類などの方法は、サンプルサイズや区切り方に敏感なため、『再現性が担保されにくい』ことがあります。
臨床データや心理データなど、個人差が大きいデータほど、この傾向が強まります。
解析結果をより安定させるためには、データ数を増やす、明確な基準を用いる、あるいはデータ処理方法を固定化するなどの工夫が求められます。

まとめ:研究に活用するには?

HRVの解析を適切に行うことで、ストレス状態をより正確に評価できる可能性が示されました。
ただし、
単純な相関だけで判断せず、
✔散布図で全体の傾向を確認し、
✔外れ値やデータ分布を考慮したうえで、
✔非線形な関係や群間比較も含めて解析を進める

ことが、信頼性の高い研究につながります。

きりつ名人を研究で活用されたい方はお気軽にご連絡を

きりつ名人ヘルスケアは、医療機器プログラム「血圧・心拍変動解析ソフトmeijin」(きりつ名人)のノウハウをもとに開発した製品です。
起立負荷をかけた際の心拍変動を解析 できるため、ストレス評価や自律神経研究に活用できます。セルフモード・問診機能が搭載されています。

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