自律神経機能による建設作業員の熱ストレス評価の試み

第2回臨床自律神経機能Forum

■山崎慶太1), 小林宏一郎2), 下澤達雄3)
1)竹中工務店, 2)岩手大学, 3)国際医療福祉大学

【目的】
従来からの皮膚温度・深部体温(鼓膜温度)に加えて、建設作業員の作業中の心拍を測定し、そのR-R間隔  (心拍変動)の周波数解析結果から心拍(HR)、自律神経活動(CVRR)、交感神経指標(LF/HF)、副交感神経指標(ccvHF)を求め、ファン付き作業服(Air Conditioning Wear :ACW)の効果や熱中症の兆候など、自律神経機能により熱ストレスを抽出できるか評価を試みた。
【方法】
環境温度を、実際の屋内工事、屋外工事、それぞれの平均気温29℃、34℃に統制し、活動量は、鉄筋工、型枠大工、それぞれに現場と類似した模擬作業をさせて統制し、被験者にウェアラブル心拍センサVHS-1(ユニオンツール社製)をベルト電極を使用して胸骨下部に装着して心電波形を測定した。被験者は、鉄筋工6名、型枠大工6名の計12名、二人一組で2日間(29℃、34℃)実験を行い、一人はACW着用、もう一人はTシャツのみで、午後はACWの有無を交代し実験を行った。計測した心電波形をについて、MEM法(最大エントロピー法)による周波数解析と時間領域解析を行い、HR、CVRR、LF/HF、ccvHFをそれぞれ算出した(HRV名人(クロスウェル社製)を使用)。
【結果】
環境温度34℃で、鉄筋工の自律神経活動と活動量の一日の経時変動の例では、ccvHFが休憩時間中に高く、午前作業終了時(ACWあり)に比べて午後作業終了時(ACWなし)のHRは高く、CVRR、ccvHFは低くなる傾向が認められた。環境温度34℃のCVRRの二元配置分析結果(有効な分析対象者数94名)でも、ACWなしの場合、午後(平均値4.43%)は午前(平均値5.91%)より有意に低く、かつ午後の時間帯では、ACWなし(平均値4.43%)はACWあり(平均値5.85%)より有意に低く、自律神経活動の低下から疲労の蓄積が示唆される午後の時間帯は、 特にACWの効果が顕著な可能性が考えられた。

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