日常生活の身体活動量が睡眠中の自律神経活動と睡眠の質に与える影響

臨床自律神経機能Forum
■吉田豊,湯田恵美,早野順一郎(名古屋市立大学大学院 医学研究科 医学医療教育分野)

【目的】
近年,健康管理のためのウェアラブルセンサが普及している.本研究では,腕時計型脈波計を用いた自身の睡眠管理を目的として,日中の身体活動量が睡眠中の自律神経活動と睡眠の質に与える影響を解析した.
【実験方法】
被験者は健常男性2名(subA:40歳,subB:23歳),起床後,活動量計 (Lifecorder GS,株スズケン)を腰に装着し,その日の就寝までの1日のエネルギー消費量(EE:energy expenditure) [kcal]を測定する.睡眠中は,3軸加速度センサ内蔵・腕時計型脈波計(APM,株スズケン)を用いて,脈波と体動の加速度を測定した.測定は21日間行った.subBは,2日だけ脈波の測定精度が保てなかったため,データ数は19日とした.
【解析方法】
脈波信号から脈拍間隔時系列を2Hzで算出した.就寝してから90分間おいて,心拍変動の平均NN間隔(MNN),高周波数成分のパワー(HFP,0.15-0.45 Hz)に対応する指標を算出した.また,睡眠の質は,終夜の3軸加速度から睡眠効率(SE : Sleep efficiency)算出して評価した.
【結果・考察】
subAは活動量の多い日と少ない日があるため,100[kcal]以上で相関係数を算出した(Fig1,Table1).
日常生活において身体活動量が多い日は,就寝後90分間のMNNとHFPが小さい.従って,心拍数が高く,迷走神経活動の抑制が示唆される.また,若年より中年の方が,EEと心拍変動指標の相関が強いため,加齢による体力低下に伴う生体負担度の増加は,睡眠中の自律神経活動に与える影響が強いと考えられる.若年は,活動量が多い日は睡眠の質が高まるが,中年では影響がなかった.
【まとめ】
睡眠管理をするためには,SEだけでは評価し難く,心拍変動指標も取り入れて評価しなければならない事が示唆される.今後,サンプル数を増やし検討して行きたい.

 

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