HANSの自律神経障害

第2回臨床自律神経機能Forum

HPV vaccination associated neuro-immunopathic syndrome(HANS)の自律神経機能障害:きりつ名人所見から学ぶ

平井利明1),黒岩義之2),西岡久寿樹3)4)

1)帝京大学医学部溝口病院神経内科,2)帝京大学医学部溝口病院脳卒中センター,
3)政策大学院大学,4)一般財団法人難病治療研究振興財団

【背景】
我々は子宮頚癌ワクチン後の副反応に対してHANS(HPV vaccine-associated neuro-immunopathic syndrome)という疾患概念を提唱し,脳血流異常,脳波異常,内分泌異常と報告し,その責任病巣は視床下部・視床・辺縁系とした.
【目的】
子宮頚癌ワクチン後接種後の患者における脳波所見の共通した特徴を捉えること,発作性異常運動を認めるHANSの自律神経異常を生理学的に捉える.
【対象・方法】
脳波検査は,HANSと診断された25症例(14歳から22歳の女性)で行われた.「きりつ名人」は,発作性異常運動を認めるHANSの4症例(16歳から22歳の女性).「きりつ名人」で自律神経活動,交感神経機能(反射・活動),副交感神経機能,カテコラミン・コリン作用成分を評価した.4例とも起立位をとれず下肢挙上で測定した.診断には西岡らのHANS診断予備基準2014を用いた.子宮頚癌ワクチン接種前にてんかん,統合失調症,うつ病,線維筋痛症,膠原病患者は除外した.ベンゾジアゼピン系薬剤の内服者も除外した.
【結果】
脳波では「14/25例でwaxing&waningの欠如,9/25例でslow α波(9Hz未満),8/25例でdiffuse α波」で, 「2/25例で陰性棘波,7/25例でsmall positive spikes」で,「20/25例でα波異常が主たる所見」であった.「きりつ名人」では,自律神経活動は3例が活動低下(1例は反射亢進),交感神経活動は3例が活動低下(1例は反射亢進,1例は反射低下),副交感神経機能は3例で活動低下,カテコラミン作用成分は3例が活動低下(1例は反射亢進),コリン作用成分は3例で活動低下(2例は反射亢進)であった.「きりつ名人」を発作前後で施行しえた症例では,発作時に交感神経指標(LH/HF)の高値と,副交感神経指標(HF)の低値を認めた.
【考察】
脳波検査の結果は過去の我々の報告のうち視床障害を支持する可能性がある.「きりつ名人」については症例数を増やすと共に治療的改善の客観的な指標になるか検討を重ねたい.

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