心拍変動解析の新たな可能性

「第2回臨床自律神経機能Forum 抄録」

■早野順一郎 (名古屋市立大学医学研究科)

1970年代に始まった現在の心拍変動研究は、自律神経機能評価法の開発および疾患の予後予測という2つの流れの中で進んできた。前者では検査室等における短時間心拍変動のスペクトル解析から、心臓迷走神経機能指標としての高周波数(HF,0.15-0.45 Hz)成分や心拍数圧受容器反射性調節機能指標としての低周波数(LF,0.04-0.15 Hz)成分などが発見され、後者ではホルター心電図から得られる自由行動下24時間心拍変動の時間領域、周波数領域、非線形解析によって、急性心筋梗塞後や慢性透析下末期腎不全などの生命予後指標である超低周波数成分(VLF)、detrended fluctuation analysis (DFA)によるα1、deceleration capacity(DC)などが発見された。この2つの研究の流れは現在も続いているものの飽和状態に近づいていることも否めない。これに対し、近年、心拍変動を心拍ゆらぎのパターンとして見直す研究が第3のアプローチとして始まっている。その嚆矢と言えるのは、心室性期外収縮に対するR-R間隔反応から圧受容体反射感受性を評価することで急性心筋梗塞後の予後を予測するheart rate turbulence (HRT)である。また、演者らは心拍ゆらぎから得られる生体指標としてcyclic variation of heart rate (CVHR)による睡眠時無呼吸の検出、CVHRの振幅(Acv)による急性心筋梗塞や心不全の予後予測、HFパワー集中度(Hsi)による入眠時点及びノンレム睡眠の検出、R-R間隔のDip & Waveによる運転中の眠気の検出などの研究を進めている。心拍変動解析の新たな可能性として、第3のアプローチにおける研究成果を紹介したい。

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